“The Stump” f.k.a “4stump”。
2019/02/05に公開された彼の復帰作”Peter Pan”を聴いてからというもの、まるで熱に浮かされたように彼の楽曲をリピート再生していた(というか今もしている)。KOHHの作品を多数手がける理貴プロデュースによる重厚でダイナミックなトラックを舞台に、奇を衒わない正統派フローで高度に練られた歌詞を自由にデリバリーするその才能は、ネバーランドを自由に飛び回るPeter Panのように素直で残酷だ。自らに”切り株”(Stump)という名を名付けたこの才能が、どこから来てこれからどこに向かうのか?最高のインタビューが出来たので是非チェックしてください。
The Stump – “Peter Pan” (Prod.理貴)
・突然のインタビュー依頼を快諾していただきありがとうございます。ではまず簡単な自己紹介をお願いします。
St:ラッパーの「The Stump」as「4stump」です。出身は大阪府の東大阪市で今20歳です。よろしくお願いします。
・よろしくお願いします。東大阪市はどんな街ですか?
St:んー。無駄に広いですw。栄えてる所もあれば部落で汚い所もあります。僕は部落の地域に住んでいるんですけど、本当に工場と団地と豚小屋しかないですねw。でも少し自転車を漕げば繁華街やネオン街があります。そこには仲間が経営してるバーが何個もあって、平日からみんなでそこにいます。1つの大きいビルに固まってるんですよね 、3階・5階・6階が仲間の店みたいな。居心地は超いいですね。ご飯も美味しいし。
・愛すべき地元って感じで良いですね。では次に名前の由来を教えてください。
St:在日コリアン4世として産まれたんです。
父親が韓国人、母親が韓国と日本のハーフなんで僕は3/4が韓国の血が流れたクオーターなんですよ。でも僕を最後に日本に帰化すると決めてたらしくて、それで「4等分された切り株(4stump)」って感じで付けました。公園とかにある木が切られて下の部分だけ残ってるあの「切り株」です。活動休止の少し前に帰化して在日4世じゃ無くなったので「The Stump」に改名しました。
・歌詞もそうですけど自身の名前に対しても描写の仕方が興味深いですね。もう少し詳しく教えていただきたいのですが「切り株」は何をイメージしてるんですか?
St:「切り株」ってなんかリセットっていうイメージがあるんですよね。切り落とされて一欠片だけ残ってるみたいな。僕も家族が繋いできた韓国のDNA 最後の一欠片なので「僕が残さないと。」って感じで凄いそこが自分とリンクしました。だから「4stump」です。
・自身のルーツから生まれた名前なのですね。では韓国のクオーターであることが自身のアイデンティティーに何か影響を与えましたか?
St:特に無いです。名前ぐらいじゃないですかね。
・そうなのですね。では次にRAPを始めたきっかけを教えてください。
St:小学3年ぐらいの時に、家庭環境や先輩達の影響で悪い道に行ってしまったんですよ。そこで母親が「少しでもストレスや苛立ちを発散させるように」みたいな訳のわからん理由でドラム教室に入学さしたんです。
・ドラム叩く事で苛立ちを発散しろと。
St:はい。団地住みで母子家庭でお金も無いはずやのに。。。そしたら思った以上にハマっちゃって、小学生の癖に海外の音楽、主にLINKIN PARKとかでドラマを叩いてて、それでLINKIN PARK & Jay Z – “Numb/Encore”を聴いてRAPを好きになりました。そこからドラムを辞めてもずっとブラックミュージックやHIPHOPは聞いていて、高校1年生から歌い出しました。
・なんか色々繋がった気がします。入り口がLINKIN PARKだったんですね。Stumpさんの楽曲に感じるエモさのルーツの1つな気がしました。ちなみに”LINKIN PARK”のリーダー”Mike Shinoda”がアジア人だったことには何か感じましたか?
St:なんか血がどうであれ産まれ育った場所が全てだと思います。僕もそうですけど、韓国で育っていたらまた違う人生やったやろうし。でもリスペクトは凄いしてますねw。LINKINのリーダーがアジア人って凄え!みたいな。誇らしいですよね。
・ですよね。自分も初めて知った時はなんか嬉しかったです。では次に、歌詞の書き方が詩的な上にテクニカル(サビのリフレインを崩す構成とか、1stバースにサビを引用してバーストサビの境界をボカすとことか、1stバースと2ndバースの最後を重ねたりとか)で初めて聴いても言いたい事が伝わってきたのですが、歌詞を書くにあたって何かこだわりはありますか?個人的にはロックとヒップホップの歌詞のハイブリッドなセンスを感じました。
St:確かにROCKな要素はあるかもしれないですね。本職の人達に怒られちゃうかもですけどw。ずっと小学生の時から日本語~英語までメインのROCKやメインのHIPHOPを聴いてたので、歌詞の組み立て方はそこから来てるのかもしれないです。こだわりかどうかはわからないですけど、「きちんと」音楽をする事は心がけてます。けど「適当に」みたいな。なんか矛盾してますけど「綺麗に散らかってる」音楽がしたいです。
・言ってることなんとなく分かります。それにしても「綺麗に散らかってる音楽」とかホント言葉選びのセンス良いですよね。。。さっきも言ったように歌詞がすんなりと耳に届くのには歌詞の良さに加えてRAPが異常に上手いというのもあったですが、RAPをする以前に歌を歌っていたことはありますか?また歌うようなフローがStumpさんの魅力の一つでもあると思うのですがフローをする上で気にかけていることはありますか?
St:ラップ以外歌っていた事は無いですね。フローは完全にノリです。ビートを聞いて、ブースに入って、宇宙語みたいな感じでフローを何本か録るんですけど、なんだかんだで全曲1番最初に歌ったフローになる事が多いです。もっと頑張ります。
・そうなんですね、ってことはこれからもっとヤバくなるって事ですね。。。では次は、活動を休止した理由と再び動き出した理由を教えてください。
St:第11回高校生ラップ選手権に出て、思った以上に自分を知ってくれる人が増えたんですよ。
夕方とか家を出て地元を歩いていると、中学生・小学生ぐらいの男の子達女の子達が「写真撮ってください」とか「サインください」とか。Eminemすら知らないような子から。本当凄かったんです。むっちゃ嬉しかったんですけど、その反面、大阪のクラブに行くと誰も僕の事は知らないんですよ。それってカッコよくないでしょ、ラッパーとしてHIPHOPって言う音楽が好きな以上。クラブで僕の曲が流れずに街ではチヤホヤされてる自分にハテナが出てきたんです。それで一度地に足をつけて伸びた鼻を折る期間が必要と感じたので、申し訳ない事に休ませてもらいました。曲はずっと作ってましたけど。
・TVの影響力の大きさを感じた一方で自分に問いかけた結果って事ですね。少し話は変わりますが、歌詞に「大人の右手は今はいらん」とありますがここは何を意図しているのでしょうか?
St:高校生ラップに出てから色んな大人の人達がお声をくれてたんです。けどそこに所属してしまうと「一緒にやってきた仲間と好きに音楽をしてお金を稼ぐ」っていう夢が減ってしまう気がして。当たり前ですけど。
「仲間捨てて」って言うと大袈裟かもしれないですけど、どうしてもなんか気に食わなくて。でも「夢も叶えたいし」っていうので凄い悩んじゃって落ちちゃったんですよねw。
・それで「お前らの目には常に映ってるゼロ / その話は他にしてや」と繋がるんですね。
St:はい。それで 落ち着いてきた頃にとりあえず「HIPHOPをしよう。」って思いました。どうしても、アーティストってより未完成のなんちゃってラッパーの僕がそこで行ってしまうとダメな気がしたんです。誰の為でも無くて、ただ自分の為にです。
・その話に乗っかれば簡単に夢に近づく切符が手に入ったかもしれなかったのにそれを断るという。まぁ当たり前なのかもしれませんが。。。
St:どうなんですかねw。その切符も確実に片道切符じゃないですか。僕みたいな適当なクソガキが行っていい場所がどうかもわからなかったし 「過去の恋愛よりも歌わないといけない歌があるし」ってw。
・では自信をつけて戻ってきた今、メジャーから誘いが来たら話を聞いてみる気はありますか?それとも今はまだインディペンデントでやっていこうと思っていますか?
St:とりあえず今は自分と仲間を信じます。いつか行きたいんですけど、とりあえずインディペンデントでZEPP OSAKAぐらいはやりたいですよね。欲を言えば日本武道館。大阪城ホール。がんばります。
・ZEPPぐらいだったらStumpさんならすぐ出来そうな気もしますね。あとMVを見て気になったのですがHIGHVISION STREETはユニットなのですか?そして今は活動しているのですか?
St:まあクルーでもありユニットでもあるって感じですかね。どこまで行っても仲良い奴達ですw 。音楽のジャンルもレゲエもいたり HIPHOPもいたりで。今はとりあえずみんなソロ活動に集中しようって事で今年からソロ中心になりました。歌い手だけで6人はいてるんですけど まあ 2年後ぐらいにもう一度集まろうって勝手に考えてます。何か起こせる気がするんです。
・そういう仲間なんですね。その為にも個々がソロ活動を頑張ると。では次にKOHHの仲間でありKOHHをはじめ加藤ミリヤ、ANARCHY、AK-69らにビートを提供している「理貴(RIKI)」さんに曲のプロデュースをお願いした経緯や理由などがあれば教えてください。
St:理貴くんは昔から好きなビートメイカーであり憧れの人で。普段お世話になっている大阪のDJ下拓さんと休止中に復活の曲の打ち合わせをしてる時に「理貴さんとかいつかやりたいっす」って話もしてたんです。そしたら下拓さんが「理貴なら聞いてみてあげるよ!知り合いがいるから!」って言っていただいて「まぢすか!?やばいっす!」みたいな。そこから曲を送って、依頼を受けていただいて、理貴くんのスタジオに行って。って感じです。そこから結構プライベートでも遊ぶようになったり仲良くしてもらって、これからも超お世話になると思います。
・そういう流れだったんですね。音の相性良いですよね。ではあの印象的なMVを作ったSpikey JohnさんにMVをお願いした経緯や理由などがあれば教えてください。
St:Spikey君に関しては、休止を決めたぐらいに「復活する時のMVはSpikey john」って超勝手に決めてました。Spikey君はカッコ良すぎるでしょw。知人の繋がりで接点はあったんですけど。
・OZworld a.k.a R’kumaさんのMVやってましたもんね。
St:はい。でも、Spikey君とはその頃はきちんと話した事が無くて。ある日、MVになった「Peter Pan(prod.理貴)」のマスターデータが届いたタイミングぐらいで、たまたまSpikey君がインスタライブをしていたんですよ。それでコメントで「4stumpです!曲できたんでよかったら聴いてください!」って送ってw。したらSpikey君が「これカッコいい!撮ろうよ!」みたいなノリやったと思います。理貴くんと同じくそこから結構プライベートでも仲良くしてもらうようになって、これからも超お世話になると思います。はい。
・そうだったんですね。上手くハマったんですね。では次に、人生を変えた出来事があれば教えてください。
St:色んな事に気づけたので、良くも悪くも「高校生ラップ選手権」ですかね。お陰様で僕の事を知ってくれる人が段違いに増えた。あれに出てなかったら今頃自分がやりたい事もわからんと地元で有名人になって、気づいたら30歳やと思いますw。沢山迷いましたけど今となれば感謝しかないです。
・大きな出来事ですよね。では次に、今回のインタビューのきっかけとなった復帰作の”Peter Pan”に関して。自分はあの曲を聴いて、歌うことに対する喜びともう歌を手放さないという固い決意を感じました。それに歌詞の内容も全くチャラくなく非常に好感を持てました。自分にとって音楽をやる上で大事にしていることを教えてください。
St:んー。1番大事にしている事は自由なクソガキでいる事ですかね。クソガキなんで本当w。色んな大人の世界から手招きをされる度に徐々に大事な物を忘れてしまって最終落ちちゃってw、めんどくさいです本当w。今となれば笑えますけど、本当歌どころじゃなかったんですよね。そこから仲間の力もあってちょっと落ち着いて来たぐらいにやっと書けた曲なんで、気持ちは入ってると思いますね。わからないですけどw。
今使って作ってる曲たちの中にはいろんな曲があってチャラいやつはチャラいです。僕がたまにはチャラい歌も聴きたくなるんで。常に「自分の曲が自分の曲じゃなかったとしても聴きたい音楽」をするっていう事も大事にしています。だから何を言われても「俺がこの曲好きやからOK 」みたいな感じです。
・そうなんですね。それも早く聴いてみたいですw。でも大事ですよね自分が納得出来るかって。それが自分がStumpさんの楽曲を聴いていてハードコアだなって思う所なんだと思います。
St:「スウィートなハードコア」ってのが自分の結構テーマなんですよね。「甘く苦く」みたいな。
・その通りですね、夢と現実の狭間で現実を描く感じとか、甘く苦いですよね。では次に今の夢を教えてください。
St:夢は仲間と地元の繁華街にビルを建てたいですw。
・でみんなで同じビルに店舗を構えると。ぜひその夢が「昔インタビューで言ってたのを実現した」ってなるのを期待してます。では今後の予定を教えてください。
St:EPかミニアルバムを出します。小箱でワンマンも考えてます。まだまだ頑張らないとですけど。
・新作楽しみに待ってます!では最後にこのインタビューを読んでる人にメッセージを!
St: はじめましての人もお久しぶりの人も長いインタビュー読んで頂いてありがとうございます。活動休止中に計画していた物が、今年来年にかけて着々と形になってくると思いますので、これからも応援よろしくお願いします。ぶっちゃけこう言うインタビューってなると、かしこまっちゃう性格なんで、Liveとか曲とかで生の僕を見に来てもらいたいっす。よろしくです。forever yong peter pan。
・貴重なお話ありがとうございました!
思わぬロングインタビューとなってしまったが彼の楽曲に潜むドラマの一部が少しだけ垣間見えたのではないでしょうか。これから日本のシーンに新たな波を起こす”The Stump”の活躍を期待してう。
そうそう実はこのインタビューを仕上げている最中にも興味深い動きが…続報は追って。
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